第1問(配点25点)
(設問1)
D社と同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較してD社が優れていると考えられる財務指標を2つ、D社の課題を示すと考えられる財務指標を1つ取り上げ、それぞれについて、名称を⒜欄に、その値を⒝欄に記入せよ。なお、優れていると考えられる指標を①、②の欄に、課題を示すと考えられる指標を③の欄に記入し、⒝欄の値については、小数点第3位を四捨五入し、単位をカッコ内に明記すること。また、解答においては生産性に関する指標を少なくとも1つ入れ、当該指標の計算においては「販売費及び一般管理費」の「その他」は含めない。
①(a)売上高総利益率 (b)59.59%
②(a)棚卸資産回転率 (b)33.41回
③(a)労働生産性 (b)467.64万円
【解説】
優れている財務指標について与件文からは特に目を引く部分は見当たらず、数値から判断した。収益性は3指標(売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率)全て同業他社より優れているが、3指標のうち、特に売上原価が低いことが目立つ。営業利益率は同業他社より優れているものの、売上高販管費率は同業より高い。経常利益については与件文に関連する記載がないので「売上高総利益率」を選択した。効率性は売上債権回転率と比較して、「棚卸資産回転率」を選択した。劣っている指標には「有形固定資産回転率」と「自己資本比率」があったが、残り1つは生産性に関する指標ということで「労働生産性」を選択した。労働生産性=(売上高-売上原価-その他以外の販管費)÷53名で計算した。同業他社の677.17万円より劣っている。
(設問2)
D社が同業他社と比べて明らかに劣っている点を指摘し、その要因について財務指標から読み取れる問題を80字以内で述べよ。
「劣っている点は、有形固定資産回転率と労働生産性である。長期借入金で増えた有形固定資産が売上に貢献しておらず、多い従業員も売上に貢献しておらず、生産性が低い。」
第2問(配点20点)
D社は、海外における中古自動車パーツの需要が旺盛であることから、大型の金属積層造形3Dプリンターを導入した自動車パーツの製造・販売を計画している。この事業においてD社は、海外で特に需要の高い駆動系の製品Aと製品Bに特化して製造・販売を行う予定であるが、それぞれの製品には次のような特徴がある。製品Aは駆動系部品としては比較的大型で投入材料が多いものの、構造が単純で人手による研磨・仕上げにさほど手間がかからない。一方、製品Bは小型駆動系部品であり投入材料は少ないが、構造が複雑であるため人手による研磨・仕上げに時間がかかる。また、製品A、製品Bともに原材料はアルミニウムである。
製品Aおよび製品Bに関するデータが次のように予測されているとき、以下の設問に答えよ。
| 〈製品データ〉 | 製品A | 製品B |
| 販売価格 | 7,800円/個 | 10,000円/個 |
| 直接材料(400円/kg) | 4kg/個 | 2kg/個 |
| 直接作業時間(1,200円/h) | 2h/個 | 4h/個 |
| 共通固定費(年間) | 4,000,000円 | |
(設問1)
D社では、労働時間が週40時間を超えないことや週休二日制などをモットーとしており、当該業務において年間最大直接作業時間は3,600時間とする予定である。このとき上記のデータにもとづいて利益を最大にするセールスミックスを計算し、その利益額を求め⒜欄に答えよ(単位:円)。また、⒝欄には計算過程を示すこと。
(a)2,840,000円
(b)
製品A/個の限界利益: 7,800-(400×4)-(2×1200) = 3,800円
製品B/個の限界利益:10,000-(400×2)-(4×1200) = 4,400円
製品1個当たり限界利益はBが高いが、1時間当たりの限界利益でみると、
A:3800÷2 = 1,900円
B:4400÷4 = 1,100円
となるので、年間最大直接作業時間の3,600時間の中で優先的に製造するのはAになる。
AとBの各製造数の上限は無いので、利益を最大にするにはAだけ製造する。
Aだけ製造する場合の製造数は、3,600h÷2h = 1,800個
利益額は、3,800円×1,800個-400万円 = 2,840,000円
(設問2)
最近の国際情勢の不安定化によって原材料であるアルミニウム価格が高騰しているため、D社では当面、アルミニウムに関して消費量の上限を年間6,000kgとすることにした。設問1の条件とこの条件のもとで、利益を最大にするセールスミックスを計算し、その利益額を求め⒜欄に答えよ(単位:円)。また、⒝欄には計算過程を示すこと。
(a)2,200,000円
(b)Aをx個、Bをy個製造すると
年間最大直接作業時間と消費量上限から、以下の連立方程式となる。
2x+4y=3600
4x+2y=6000
上記から、x = 1400 y = 200
利益額は、3,800円×1,400個+4,400円×200個-400万円 = 2,200,000円
第3問(配点35点)
D社は新規事業として、中古車の現金買取りを行い、それらに点検整備を施したうえで海外向けに販売する中古車販売事業について検討している。この事業では、取引先である現地販売店が中古車販売業務を行うため、当該事業のための追加的な販売スタッフなどは必要としない。
D社が現地で需要の高い車種についてわが国での中古車買取価格の相場を調査したところ、諸経費を含めたそれらの取得原価は1台あたり平均50万円であった。それらの中古車は、現地販売店に聞き取り調査をしたところ、輸送コスト等を含めてD社の追加的なコスト負担なしに1台あたり60万円(4,800ドル、想定レート:1ドル=125円)で現地販売店が買い取ると予測される。また、同業他社等の状況から中古車販売事業においては期首に中古車販売台数1か月分の在庫投資が必要であることもわかった。D社はこの事業において、初年度については月間30台の販売を計画している。
以下の設問に答えよ。
(設問1)
D社は買い取った中古車の点検整備について、既存の廃車・事故車解体用工場に余裕があるため月間30台までは臨時整備工を雇い、自社で行うことができると考えている。こうした中、D社の近隣で営業している自動車整備会社から、D社による中古車買取価格の2%の料金で点検整備業務を請け負う旨の提案があった。点検整備を自社で行う場合の費用データは以下のとおりである。
| 〈点検整備のための費用データ(1台あたり)〉 | |
| 直接労務費 | 6,000円 |
| 間接費 | 7,500円 |
*なお、間接費のうち、30%は変動費、70%は固定費の配賦額である。
このときD社は、中古車の買取価格がいくらまでなら点検整備を他社に業務委託すべきか計算し⒜欄に答えよ(単位:円)。また、⒝欄には計算過程を示すこと。なお、本設問では在庫に関連する費用は考慮しないものとする。
(a)725,806円
(b)費用データが買取価格50万円の場合とすると、
変動費率は2,250円÷50万円= 0.0045となる。
買取価格x円とすると、0.0045x+11,250円 = 0.02x
0.0155x = 11250よりx = 725,806.451円≒725,806円
※費用データが買取価格が50万円の場合でなく不明とすると変動費も不明なので、
固定費である11,250円 = 0.02xとして、x = 562,500円までなら業務委託となる。
これも前提条件が不明なので、両方の場合を書いてもいいかも。
(設問2)
D社が海外向け中古車販売事業の将来性について調査していたところ、現地販売店よりD社が販売を計画している中古車種が当地で人気があり、将来的にも十分な需要が見込めるとの連絡があった。こうした情報を受けてD社は、初年度においては月間30台の販売からスタートするが、2年目以降は5年間にわたって月間販売台数50台を維持する計画を立てた。
この計画においてD社は、月間50台の販売台数が既存工場の余裕キャパシティを超えることから、中古車販売事業2年目期首に稼働可能となる工場の拡張について検討を始めた。D社がこの拡張について情報を収集したところ、余裕キャパシティを超える20台の点検整備を行うためには、建物および付属設備について設備投資額7,200万円の投資が必要になることがわかった。また、これに加えて今後拡張される工場での点検整備のために、新たな整備工を正規雇用することにした。この結果、工場拡張によって増加する20台の中古車にかかる1台あたりの点検整備費用は、直接労務費が10,000円、間接費が4,500円(現金支出費用であり、工場拡張によって増加する減価償却費は含まない)になる。この工場拡張に関する投資案について、D社はまず回収期間(年)を検討することにした。回収期間を求めるにあたってD社は、中古車の買取りと販売は現金でなされ、平均仕入価格や販売価格は今後も一定であると仮定した。なお、設備投資額と在庫投資の増加額は新規の工場が稼働する2年目期首にまとめて支出されることとなっている。また、D社の全社的利益(課税所得)は今後も黒字であることが予測されており、税率は30%とする。
上記の条件と下記の設備投資に関するデータにもとづいて、この投資案の年間キャッシュフロー(初期投資額は含まない)を計算し⒜欄に答えよ(単位:円)。また、⒝欄には計算過程を示すこと。さらに、⒞欄には⒜欄で求めた年間キャッシュフローを前提とした回収期間を計算し、記入せよ(単位:年)。なお、解答においては小数点第3位を四捨五入すること。
| 〈設備投資に関するデータ〉 | |
| 設備投資額 | 7,200万円 |
| 耐用年数 | 15年 |
| 減価償却法 | 定額法 |
| 残存価額 | 初期投資額の10% |
(a)8,660,000円
(b)20台分の年間キャッシュフローを計算する。
売上:20台×60万円×12 = 144,000,000円
取得原価:(20台×12+在庫20)×50万円 = 130,000,000円
直接労務費・間接費:20台×12×14,500円 = 3,480,000円
減価償却費:7,200万円×0.9÷15 = 4,320,000円
したがって、年間キャッシュフローは
(144,000,000-130,000,000-3,480,000)×(1-0.3)+4,320,000×0.3 = 8,660,000円
(c)72,000,000÷8,660,000 = 8.314≒8.31年
(設問3)
D社は、工場拡張に関する投資案について回収期間に加えて正味現在価値法によっても採否の検討を行うことにした。当該投資案の正味現在価値を計算するにあたり、当初5年間は月間50台を販売し、その後は既存工場の収益性に鑑みて、当該拡張分において年間150万円のキャッシュフローが継続的に発生するものとする。また、5年間の販売期間終了後には増加した在庫分がすべて取り崩される。この条件のもとで当該投資案の投資時点における正味現在価値を計算し⒜欄に答えよ(単位:円)。また、⒝欄には計算過程を示すこと。
なお、毎期のキャッシュフロー(初期投資額は含まない)は期末に一括して発生するものと仮定し、割引率は6%で以下の係数を用いて計算すること。また、解答においては小数点以下を四捨五入すること。
| 複利現価係数(5年) | 0.7473 |
| 年金現価係数(5年) | 4.2124 |
(a)▲5,628,616円
(b)
(1)5年間のキャッシュフローの現在価値は、8,660,000円×4.2124 = 36,479,384円
(2)販売終了後に継続する年間150万円のキャッシュフローの現在価値は、
150万円÷0.06×0.7473 = 18,682,500円
(3)5年後の在庫増加分取り崩しの税効果の現在価値は、
100台×50万円×0.3×0.7473 = 11,209,500円
(1)+(2)+(3)-7,200万円 =▲5,628,616円
【解説】
「在庫を取り崩す」という意味について、具体的に在庫がどうなるのか分かりませんが、与件文に「5年間の販売期間終了」とあるので、海外中古車販売事業が終了する以上、増えた在庫はすべて廃棄されると解釈し、「廃棄損」を減価償却費と同じ非現金支出費用として税効果を計算しました。これで合ってるかは不明です。廃棄ならそう書いてほしい。
また、販売終了後に継続する年間150万円のキャッシュフローの現在価値については、150万円を割引率6%で割ると、キャッシュフローが発生する時点(5年後)での継続価値として、さらに投資時点の現在価値にするために複利現価係数を掛けました。この第3問は部分点狙いかな。
第4問(配点20点)
D社が中古車販売事業を実行する際に考えられるリスクを財務的観点から2点指摘し、それらのマネジメントについて100字以内で助言せよ。
「①円高に動くことで赤字に陥る為替リスクと②5年間で初期投資額を回収できないリスクである。①は為替予約やオプション取引によりリスクヘッジし、②は事業期間延長や販売車種変更で収益性向上を図るべきである。」
【解説】
1点目は為替想定レートが与件文にあるので、為替リスクは書いた人が多いと思う。2点目が難しいが、企業全体に影響するリスクでなく、この中古車販売事業の「事業リスク」だとすると、1点目のリスクの結果(赤字)が行き着く所は初期投資額を回収できないリスクになるので、これを書いた。設問2で回収期間が5年を超えるのと、設問3でNPVがマイナスになったので(計算できない場合でも、設問2が5年で回収できないので設問3でもマイナスを予想可能?)、これを補う施策を書いた。
【あとがき】
解いてみると、事例Ⅳに限らず、二次試験は正答かどうかより、あいまいな与件文からロジカルに解答するという「プロセス」が重視されているようにあらためて思いました。得点は合格者の最大公約数が基準となるので、正答は存在するものの、どう加点されるかは受験者全体の動向に左右されるので、ロジカルに考えて展開した解答が客観的に納得が得られる内容であれば、少なくとも合格点は取れると考えています。
今回の事例Ⅳについての個人的な印象としては、TACの簿記一級の意思決定会計やイケカコは一通りこなした結果、その方向性で正しかったと思います。難易度としては、特に難問はなかったと思いますが簡単な問題もなく、原点回帰的な診断士試験の事例Ⅳ(財務会計)の問題なのかなと思いました。ここ数年難しかったので。
とエラソーにいっても、答えが合ってるかどうかは全く自信ありません。あくまで個人的な解答ですので、その点はご了承ください。参考程度に軽く見ていただけると幸いです。なお、事例Ⅳの結果は、初回55点(B)、2回目は67点(A)です。

